製造工程
2.煮る
(煮熟)
(煮る)
← 前の工程へ | 次の工程へ → |
楮・三椏・雁皮などの皮はその繊維素(セルロース)が主成分ですが、他の物質も多く含まれています。それがペクチン質などの物質によって結合しているので、紙に必要な繊維素を取り出すために草木を焼いた灰を水に浸してとった灰汁やソーダ灰(炭酸ナトリウム)の溶液中で、加熱して溶かすのがこの工程です。このように煮熟(しゃじゅく)することによって、繊維束がほぐれやすくなるのと同時にリグニンなどの紙に有害なものも溶け美しい紙に仕上がるようになります。
靱皮繊維(じんぴせんい)は相当に安定した物質であり、酸には弱いがアルカリには強いという特徴があります。アルカリ性の物質の中でもソーダ灰には繊維を傷めず使い方も簡単であり、特に生漉きの場合に繊維の色・光沢を十分に発揮させ、強くて光沢のある紙を得られるため、越前和紙ではよく使用されています。
その分量ですが、一般にソーダ灰は原料に対し12%〜18%が適量であるとされています。
煮熟(しゃじゅく)時間は1〜2時間程度ですが、三椏の場合は楮よりやや短時間で煮あがります。いづれの場合も火を止めて3〜4時間そのまま釜の中に置いてゆっくり冷ます方法が一般的です。
紙の光沢・強さなどに煮熟の影響は大きい為この工程は特に丁寧に行います。よくほぐしながら煮込み、まんべんに熱が回るように上下を混ぜながら噴きこぼれないように心がけて行います。釜は昔も今も平釜で直径90cmのものが多いですが、燃料は薪から石炭、そして石油に変わって今はボイラーによる蒸気の煮熟が多くなっています。